第6章 夢にも思わない*宮地清志
大人しく携帯を女神の手に渡す。
その時少し触れ合った手に、異常に興奮したのは俺だけの秘密にしておく。
女神は俺の携帯を手にすると、ありがとう、と微笑みながら画面をスワイプする。
そして俺の隣に並んだかと思えば、俺の腕を引っ張って顔と顔を近づける。
「めめめ、女神っ!?これは、一体…!!」
「あっ、宮地君動かないで。上手に撮れないでしょ?」
はい、笑ってー、と言いながら俺の隣で笑顔を見せる女神。
そして、その隣で鼻の穴を膨らましながら顔を真っ赤にしている俺とのツーショットが俺のスマホに保存される。
これは夢か?夢なのか?
急いでフォルダを確認すると、一番最新の写真を表示する位置に俺と女神の顔が写っている。
夢じゃ、ない。
「女神、どうして…、」
俺が思わず女神の両手を包みながらそう聞くと、女神は可憐に笑ってこう言った。
「私も宮地君と二人で写真撮りたかったから。」
「そ、そんな、俺なんかと、どうして。」
「好きな人と思い出を残したいって思うのは、理由になってない、かな?」
コテンと頭を傾けてそう言う女神。
可愛い。可愛すぎるぞ、女神。
俺には周りにお花が見える。
だけど、なんだ?今、好きな人とかいう単語が聞こえてきた気がする。
それは、いったい誰のことだ?
女神の心を奪うなんぞ、百万年早いって今すぐ教えてやらねぇと。