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【黒子のバスケ/短編集】魔法が解けないうちに

第1章 ●瞳に映らなくとも*伊月俊







あれから、お世話になってる日向には報告しようってなって、付き合ってることを日向に教えた。




「それで、わざわざ俺に報告してくれたのか。咲良は優しいな。
……だが、伊月。お前は一々デレデレし過ぎなんだよ!いい加減そのだらしない顔をどうにかしろや!」



咲良も彼女なんだったら何とか言ってくれ、と盛大に溜息を吐きながら怒鳴ってる日向。
そんなに怒ってばっかりだと老けちまうぞ。

でも、咲良は真面目だから日向の言葉を間に受けて、後ろから咲良の肩に乗せている俺の顔を両手で挟む。
そして、俺の顔に自分の顔を近づける。




「ダメだよ、俊君。日向君を困らせちゃ。」



全然怖くない、むしろめちゃくちゃ可愛い。

咲良は目が見えないせいか、距離感が掴めなくて時々驚くような距離で迫ってくる時がある。
それがまた可愛くて、俺の顔は自分の意識とは別に緩みきってしまう。




「分かったよ。だけど、一つ条件がある。」

「…?」



首をコテンと傾けながら俺を見つめる咲良。
そんな咲良の頬を両手で挟みながら言う。




「咲良からキスしてくれたら、日向に迷惑はかけないようにするよ。」




それを聞くと、咲良の顔はみるみるうちに真っ赤に染まる。
そんな咲良の反応を見て、また口角が緩んだ。


すると、横からただならぬ空気を感じてゆっくり顔をそちらに向けると、……般若のような顔で俺を睨んでる日向が居た。

…ヤバイ、調子に乗り過ぎた。




「伊月ィ、お前はよっぽど殴られたいらしいなぁ?
よし、望み通りにしてやる。こっち来いよ。」

「ち、違うんだ、日向。ちょっと、落ち着こう、な?」

「何が落ち着けだ、ダァホ!いいから黙って一発殴らせろや、コラァ!」



そんな俺たちのやりとりを聞いて、咲良は少し驚いていたが、すぐに笑顔で笑って、




「頑張れ、日向君!」



なんてちょっと的外れなことを言っていた。
そんな咲良が可笑しくて、俺たちもいつのまにか笑っていた。


咲良、これからもずっと愛してるよ。


そんな想いが届くように咲良を抱き締めると、今度こそ本当に日向に叩かれた。






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