第13章 「いいように真に受けて」
定時で会社を退けた日、
さやかは駅前の
ドラッグストアに寄った。
駐車場を広く取った店で、
ドラッグストアと言いながら
いろんなものが置いてあるのは、
最近のこうした店のお約束だ。
特に化粧品の代表的なメーカーが
揃っているのは嬉しい。
メーカーによっては割引率も大きく、
しがないOLの身にはありがたい。
だが、その日の目的は
いつも使っている化粧品ではなかった。
有名メーカーの売り場ではなく、
日焼け止めやお手頃価格の
化粧品が並んでいる売り場だ。
しばらくその辺を探して手に取ったのは、
片手の中に収まるような丸っこい
ケースに入ったプレストタイプの
フェイスパウダー
......いわゆるおしろいである。
ファンデーションより落ちやすく、
赤ちゃんにも使えますと言う
低刺激が売りで、価格もチープだ。
少しカバー力あるほうがいいかな、
と悩みながら陳列ケースに
固定してあるサンプルを睨む。
カラーは無色透明と肌色が
四段階ほどの色合いで揃っている。