第11章 「ノビル/セイヨウカラシナ」
『どうしよう、今まで食べた
パスタの中で一番好きかも!』
「参っちまっうな、ノビルは基本的に
流通に乗ってない食い物だからな。
最近は自生してる所も少ねえしな。」
リヴァイがそう言って小さく笑う。
『笑い事じゃないよ、
一番好きなパスタがお金出しても
食べられないものになるなんて......』
確かに鉄板で美味かった、
美味かったがしかし、
この味を経験させたリヴァイを
微妙に恨んでしまう。
セイヨウカラシナは土手沿いに
売るほどあるし、菜の花でも
代用できそうだが、ノビル......
それも球根となると
ちょっと代用品が思いつかない。
「まあせいぜい味わって食え。
旬のものだしな」
〝旬〟と言う言葉がやけに心を打った。
『ノビルの旬っていつなの?』
「地域にもよるが...まあ、
春先としたもんなんじゃねえのか」
『何か、ありがたみが増すね。
一年中何でも手に入る今って
ちょっと間違ってるのかも』
スーパーなどでかろうじて旬を
感じさせる野菜といえば、それこそ
菜の花やフキノトウくらいのものである。
平均的なものが
平均的にいつでも手に入る。
考えてみれば不思議なことだ。
『野菜の旬とかもう
分かんなくなっちゃってるもんね。
旬の春先じゃないと食べられない
ノビルのパスタって貴重だよね
それにリヴァイが
いないと食べれないし。』
そう言うと、リヴァイは
やけに優しい顔で笑った。
「旬のありがたみが分かってる
さやかに褒美をやろう」
リヴァイは自分の皿からノビルの
球根をいくつかフォークにすくって
さやかの皿に移してくれた。
『やったやった〜』
とさやかは遠慮なく
譲られたノビルを味わった。