第11章 「ノビル/セイヨウカラシナ」
「汚れるの気にしなくても
土いじりには慣れてねえだろ。
砂利とか石とか、
下手するとガラスの欠片とか
埋まってることもあるんだぞ。
素手だと怪我するぞ。
軍手あったら止めなかったがな」
さやかは素直に納得した。
手が汚れることなんか
気にしないとリヴァイが
分かってくれているならそれでいい。
......にしても、
ノビルは本当に強敵だった。
リヴァイですら途中で
「チッ....」
と根を切ってしまうことがあった。
特徴的な丸い球根は、細い細い茎で
石をよけ砂利をよけながら、
一体どこまでと思うほどに
深く土の中に潜っている。
整地されていない土手だから
素直な伸び方はしていない。
見ているだけのさやかも思わず
力が入ってしまうような悪戦苦闘の末、
リヴァイは納得がいくだけの
獲物を集めたらしい。
「取り敢えず今日の晩飯分くらいだな」
さすがにあちこち凝ったのか、
立ち上がったリヴァイは
首や肩を鳴らした。
そして、
「手を洗ってくる、荷物見とけ。」
そう言い残すやリヴァイは
土手を駆け下った。
河川敷を走っていく後ろ姿は
少しかっこよく見えた。
見る間に川岸までたどり着き、
流れで手を洗っている様子である。
そしてやはり走って戻ってきた
リヴァイの手は真っ赤になっていた。
まだ川の水は冷たいらしい。