第9章 「沈み込んでいく疑問」
三月の最終週に、
初めてリヴァイのバイト代が出た。
二十日締め二十五日払いという
そのコンビニの締め日が判明したのは、
夕食後にリヴァイが律儀に
持ち出してきた給料明細を
見せられたからである。
シフトが深夜中心のためだろう。
平日しかバイトを入れていない割に、
総額は十万そこそこになっている。
「まずこれだ」
リヴァイは年期の入った財布から
一万円札を四枚抜いた。
「当座でもらった一万と、
最初に俺のもの揃えてもらった分だ」
『え、いいよあれは』
「だが気になるんだ。
受け取ってくれたら
俺も少しは肩身狭くなるだろ」
『......今まで肩身狭く暮らしてたの?』
さやかの気圧が
下がったのが声に出たのだろう、
リヴァイは困ったように
眉間にシワを寄せた。
「いくら家事引き受けるって
言っても気になるからな......
行き倒れてた分際で何を今更って
思うだろうが、男としては少しな。」
こういうときのリヴァイは
いかにも弱気に遠慮がちに
主張してくるので逆に怒りにくい。
搦手が巧い男だなといつも思う。
『分かった。じゃあもらっとくよ』
「あと、これからなんだが...」
リヴァイがまた気弱な表情で
さやかを窺った。
「俺も月にこれくらい
金入るようになっただろ。
保険と年金も払いたいから
そんなに残るわけじゃねえが、
少しは俺も食費とか家賃とか......」
そう来るだろうなと思っていたので、
さやかはにっこり笑って答えた。