第2章 「おい お前、俺を拾え」
リヴァイという名前。
さやかが彼から
直接聞いた個人情報はそれだけであった。
出会ったのはまだまだ夜が凍りつく、
冬終わりかけの休日前夜。
終電ギリギリの飲み会帰り、
朧月(おぼろづき)が出ていた。
築年はかなりいっているがその分間取りに
余裕がある2DKの集合住宅がさやかの
一人暮らしの城である。
大家は大雑把だが、
うるさいことは言わないのが取り柄。
最寄りの駅からもほどほどに近く、
駅前には小さいながら商店街がある。
利便性はまあまあといったところだ。
ほろ酔い加減で帰り道をたどり、
その頃流行っていた曲を鼻歌で歌った。
歌詞はうろ覚えだが。
そしてマンションの玄関先に近づいたとき
さやかはそれを見つけた。