第8章 「フキノトウ/フキ そしてツクシ」
そんなことを話しているうちに
リヴァイの目的地には到着したらしい。
リヴァイが自転車を
邪魔にならない所へ寄せて
スタンドを立てる。
元から生えていたのか植えたのか
微妙な木が土手の底から天に伸びて、
もうすぐ土手の高さまで
届こうとしていた。
リヴァイがその木の根元に
しゃがみ込んだ。
その根元を傘のような
形の草が囲んでいる。
これならさやかにも分かる。
『フキ?』
「それだけじゃねえぞ」
日当たりが悪いのか、
まだ地面に残っている雪を割って
顔を覗かせている淡い緑を見て、
......さやかは思わず息を飲んだ。
これは生えている所を
直に見たことはない。
『......フキノトウ?』
「まだ雄株と雌株の
区別はつかねえけどな」
言いつつリヴァイが
たすき掛けにしていたカメラを
構えてその場にしゃがみ、
浅緑のフキノトウを撮り始めた。
「こないだ見つけたときはまだ
葉が開いてなくて拳みたいだったんだ。
ちょうど綺麗に葉が開いて
フキノトウらしい姿になってる
だろうと思ってな。」
『かわいいね』
開いた葉の中には身を
固めたつぼみが丸く身を
寄せ合っている。
「ああ。色が特に早春の色だな。
さやかのパーカーの色に似てるな」
色だ!
褒められたのは色だ、
勘違いするな!
内心で言い聞かせながら
リヴァイの隣にしゃがむ。
シャッターを切っている
リヴァイの邪魔にならないように。