第5章 「気持ちが傾く」
......何か。
......意識してるのって私だけかなぁ。
同居して一ヶ月。
さやかはリヴァイを
異性として意識している。
それは認めざるを得ない。
魔が差して〝拾った〟ことも
引き止めて同居を持ちかけたことも、
結局のところは......
本能が叫んだのだ、
この男が欲しいと。
だがリヴァイのほうは相変わらず
〝躾のいい犬〟で、
(神経質で粗暴ではあるが...)
女と一つ屋根の下に暮らしながら
この一ヶ月間そんな気配一つ
感じさせたことはなく......
ごく理性的に〝契約〟どおりの
ルームシェアをしている同居人だ。
近いうちにバイトを
探すと宣言したとおり
自転車で十分ほどのコンビニに
平日の深夜のシフトを確保したらしく、
夜中はさやかの就寝と
入れ違いくらいの時間に出ていく。
夕食を作るとき
ついでにやっつけてしまうのか、
温めるだけに仕上げたさやかの朝食と
弁当を冷蔵庫の中に用意して、
しつこいくらいに玄関の鍵と
チェーンロックを
掛けるようにと言い置いて。
こうなると夜の雰囲気で何となく。
なんて流れにもならない。
バイトから戻るのは
さやかが起き出してレンジで
温めた朝食を食べている頃だ。
そしてリヴァイが
朝食を食べている途中で
さやかの出勤時間になる。
それからリヴァイは
家事を一通り終わらせて
昼過ぎまで寝ているそうだ。
買い物は週一回のまとめ買い、
夕方のタイムセールを狙うらしい。