第16章 「春の野花 - タンポポ、イヌガラシ、スカシタゴボウ」
タンポポの花と葉は
天ぷらになって出てきた。
茎は......
『佃煮?』
「バターで炒めた。
洋風に処理できる貴重な野草だ」
タンポポなど図鑑の記述で
知るまでは見て楽しむだけだった
本当に料理になって
出てくるとワクワクした。
今までの狩りに比べると、
結果がことさらに
おままごとっぽいせいだろうか。
花は衣を絡めている段階で
すっかり萎んでいたのだが、
揚げるとフワッと開いて形が戻った。
見慣れた花がそのままの形で
天ぷらになっている姿は面白い。
『イヌガラシどっち?』
「こっちだ」
簡単なおひたしに
なったものが小鉢に盛ってある。
そうすると、揃いの小鉢に盛られた
ごま和えが消去法でスカシタゴボウだ。
そしてテーブルの隅には
もう一つ皿が出ている。
花かんむりを生けた大皿だ。
リヴァイが夕食を作り終えるまでに
すっかり元気になり、
くったりしていた花は
顔を上げている。
花がある食卓というのは
今回が初めてで、
これはロケーション的には
なかなかイイ感じだ。
『いただきます』
と頭を下げて、一番気になる
タンポポの天ぷらに箸を伸ばした。
天つゆにつけ、恐る恐る一齧り......
『あ、おいしい』
苦いのではと覚悟していたのだが、
むしろ優しい味だった。
ほんのり甘い。
葉もふわりと揚って食べやすい。
『ごはん進むねぇ』
「ならいい」
リヴァイも少し
満足そうな様子である。
茎のバター炒めも洋風な
味付けが野草料理としては新鮮だ。