第16章 「春の野花 - タンポポ、イヌガラシ、スカシタゴボウ」
「すぐ水吸って元に戻るぞ、
雑草は丈夫だからな」
『雑草という草はないんでしょ?』
ふざけて揚げ足を取ると、
「そうだったな」
とリヴァイは優しい表情をした。
『でも今日はお花に
かまけちゃったから
狩りができなかったね』
「しといたぞ」
『え?!』
リヴァイはずっとさやかの
目の届く範囲にいた。
フキやセイヨウカラシナが
採れる場所はもっと先まで歩く。
さやかの気づかない間に
採りに行けたとは思えない。
『何かあった?あの辺』
リヴァイがトートバッグの中から
レジ袋を取り出し、開いて見せた。
『......タンポポ?!』
黄色い花をつけたままの
長い茎とギザギザの葉っぱが
詰め込まれている。
そして図鑑の記述を思い出した。
『そっか、タンポポって
食べられるんだよね、確か』
「料るバリエーションも
使いでもある。他にも採ったがな」
リヴァイは続けて
レジ袋り二つ出した。
小袋でタンポポよりは収穫が少ない。
『え、そっちは?』
「こっちがイヌガラシで
こっちがスカシタゴボウ」
『見分けがつかない......』
「猿でも分かるぞ、
花の形も全然違う。
スカシタゴボウのほうが
葉の切れ込みが深い」
言われてみればという
見分けポイントである。
「さやかの花かんむりにも
両方使ってあるじゃねえか」
『え、うそ!どれ!』
「これとこれだ」
リヴァイが立て続けに指差した
花かんむりの中の花は、
さやかにはまったく同じに見えた。