第15章 「術中にはまる」
時間を潰しかねて
足を踏み入れたのは
会社の近くの本屋である。
全国チェーンでかなりの規模の店だ。
クールダウンの時間潰し、
ふと思いついて向かった先は
図鑑コーナーである。
種類別に分類してある書籍の中から
植物図鑑のコーナーを探し出して、
ポケット図鑑の背表紙を眺めた。
山菜、野草、摘み菜......
いろんなタイトルが
並んでいる中から、この辺かなと
思う物をパラパラめくってみる。
見比べてみると
同じ判型のポケット図鑑でも
それぞれ特色があった。
本格的に山に分け入らないと
手に入らなそうな山菜を
メインで載せている本や、
読み手がある程度の知識を
持っていることを前提に
解説のついている本。
この辺りは
さやかには敷居が高い。
結局、初心者にも
敷居が低そうな二冊を選んだ。
〝日本の草花・春〟
〝身近な山菜・摘み菜〟
と題名がついている。
写真がキレイで
見やすかったことと、
解説が平易で
分かりやすかったことが
ポイントである。
山菜のほうは一冊で通年
フォローしてあるみたいだし、
〝草花〟のほうは季節を追って
集めていけばいいよね、と本を
裏返して値段を確かめる。
ええっ?!......と、
上げそうになった声は
何とか飲み込めた。