第1章 恋して、ヴァンプ
ドクン
て。
研究棟へとこもり、大好きな凛の血の匂いに発情してしまうこの血の衝動を抑える術はないものかと、模索していた最中。
それは突然、嫌な胸騒ぎと共にやって来た。
「二宮?」
「お前顔、真っ青だけど」
「え」
俺、は。
なんともない。
嫌な胸騒ぎに動悸はするけど、顔色が悪くなるようなことはひとつも。
「____凛」
「は?」
「すみません、俺帰ります」
「二宮?今から?薬は」
「あとお願いします」
凛。
凛になにか、あったんだ。
痛みも感覚も、なんにも感じない。
嫌な予感しかない。
ドラマとか漫画なら、ヴァンパイアとかって空飛べたりするんだろう?
あんな派手なことしてよくバレないよな、なんて思ってたけど、今はその能力まじで欲しい。
凛のところまで連れてってよ、まじで。
「_____ぇ」
ドクン、て。
再度心臓が跳ねた。
二次元のようにカッコよくはない登場ではあるが、なんとか血の匂いを辿ってここまでくれば。
目の前にあるのは、ただの肉の塊。
飛び出た内臓。
引き裂かれた皮膚。
流れ出た真っ赤な紅い血液。
目の前に横たわるのは紛れもなく最愛の、人なのに。
「………り、ん」
小さな呟きに、少しだけ指先がピクリと反応する。
「凛」
生きてる。
まだ、生きてるんだ。
なら方法はひとつしかない。
俺は躊躇なく、自分の舌を牙で突き刺して。
そのまま凛の首へとその牙を突き刺した。