第1章 恋して、ヴァンプ
「かけ、る?」
よく知ってるはずの翔琉の瞳が怪しく揺らめいて。
見たことないくらいに、恍惚の表情を浮かべる翔琉から目が離せなかった。
「……………ごめん、凜」
苦しそうに顔を歪める翔琉から視線をはずせずにいると。
後ろから抱き締められていたはずの腕の中。
それはほとんど強引に、翔琉によって組み敷かれた身体は、急に視界が反転した。
「凛ちゃんの血の匂い、ほんとヤバいんだってば」
強引な中にも。
あたしにほとんど体重を掛けないようにしてるあたり、やっぱり翔琉なんだなぁ、とか、思っちゃう。
「せっかく今まで、我慢してきたのに」
揺れる両目に合わせて揺れる、あたしの瞳。
「凛ちゃん」
絡む視線を遮るように。
真っ赤に染まる瞳を一度、伏せて。
開いた瞳は、いつものよく知る翔琉の栗色の瞳。
「ごめん、もう抑えらんない」
「ぇ」
震えたままに、顔を俯かせた翔琉が顔を上げれば。
「凛」
さっきまでの穏やかな表情が、一変。
「凛もその身体、辛いでしょう?」
妖しく口元を綻ばせる、真っ赤に染まる瞳の翔琉がいた。
「解放してあげる、その熱」
「え」
口元に笑みを浮かべて。
翔琉は文字通り、あたしの唇に噛みついた。