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恋して、ヴァンプ

第1章 恋して、ヴァンプ



「あ……」



翔琉の手を振り払った時に出来た小さな傷。
痛みさえ感じないその傷口は、一気に翔琉を別人へと、変えてしまう。







血のついたあたしの右手を掴む翔琉の表情が歪んで。



ドクンっ



て、翔琉の、心臓が鳴ったのを感じた。





「何、今の……………」


「凜ちゃんの血の匂い」

「え?」

「ほんと、食欲誘うよねこれ」


翔琉……?




「今はほんと、勘弁して欲しいんだけど」




ドクン  ドクン   ドクン



翔琉の心臓の音が聞こえる。

なんで?




何、これ。




「翔琉、大丈夫………?」


触れた翔琉の体は、驚くくらいに熱くて。
思わず咄嗟に手を離した。


「かけ、る?」



息苦しそうに胸を押さえる翔琉の表情が、どんどん歪んでいく。
何?
何が、起きてるの、今。

なんでそんな苦しそうなの。


「あ、たし………っ先生呼んでくるっ」


「凜」



翔琉から逃げるようにベッドから降りようとしたあたしは、いつのまにか翔琉の腕の中。

「逃がさない」



…………え。



この、声。


思いだしかけたあたしの思考を奪うように。
首にかけられた熱い手のひらを感じた瞬間。
故意に反らされた首筋に当てられた鋭い固いもの。

思わず息を飲んだ、その時。



一気に、皮膚を破って首筋に牙が食い込んだ。



「____んんんっ」



予想していたようにまわされた左手に塞がれて。
痛みに叫ぶあたしの悲鳴ごと、全部を飲み込む翔琉の大きな掌。




唇を塞がれながら向けた視線の先には。
見たことない顔の、愛しい人。


ジュル  ゴクン ゴクン




血液を、吸われる感覚。


って。


普通経験することなんてないと思う。
たぶん、と言うか絶対に経験することなんて、ない。




首筋から広がる熱が、全身を蝕んでいく。


力が、抜ける。



痛み、とか、恐怖、とか。



そんなものよりも何倍も、何十倍も。




あたしの体を支配する。





…………『快楽』。





そう。


これは間違いなく。


抱かれているときの『高揚感』。


そのもの。






「どんな気分?」








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