第1章 恋して、ヴァンプ
「………は………ぁ……っ」
あたし。
今。
何、した?
途端に戻った意識に。
抱きついていた手をパッと離す。
ついでに目の前にいる人物からも、一歩、離れた。
おそるおそる見上げた翔琉の首もとは。
さっきまで貪っていた、真っ赤な赤い液体で染まっていた。
「………や」
あたしが、やったの?
見るからにグロテスクなそこは、首すじから流れ出る多量の血液に染まっていて。
着ているTシャツまでも、真っ赤に染めた。
「大丈夫だよ」
「え」
「泣かないで、凜」
「かけ、る?」
「うん」
クリアになる意識でみた景色は。
学校の一角にある、校舎と校舎の隙間。
炎天下の刺すような陽射しに比べると、日の差さないここは、涼しささえ、感じる。
「大丈夫だから、凜」
真っ赤な首筋に固定されていた視線は、ドクドクと傷口から流れ出ていたはずの血液が消えたことを、見逃さなかった。
「ね?大丈夫だって、言ったでしょ」
青ざめていくあたしとは反対に。
さほど動揺もせずに翔琉はその瞳を一瞬伏せると。
すぐにその両目を、開いたんだ。
血のように、真っ赤に染まる紅い瞳を。
「____ッッ」
まるで電源が切れたテレビのように。
あたしの意識はそこでプツリと、音を立てて闇へと変わっていった。