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恋して、ヴァンプ

第1章 恋して、ヴァンプ




苦しくて。
熱くて。


喉が、焼ける。


苦しい。


熱い。




「楽にしてあげる、凛」
「かける」
「大丈夫、大丈夫だから凛ちゃん」



喉が、渇く。
焼ける。



欲しい。



欲しいの。




お願い、ちょーだい。





ソノチ、アタシニチョーダイ。









ガリって。





皮膚を突き破る音と、口の中に広がる。



血液の、味?




なんであたし。
あたし今、何して……っ!?




パニックになるあたしの頭を押さえる腕。
ぼーっとする意識が半分、クリアになるけど。
体が固まったように動かない。
指先1本、動かせない。





「飲んで、凜」


聞こえたのは、大好きな翔琉の、優しい声。


翔琉?

この状況を理解しようと、思考をフル回転させたくても。
息苦しさと。
熱さと。
全身をめぐる痛みが思考を邪魔する。


「楽になるから、大丈夫。怖くないよ」




『ノンデ』






「………っ」





飲む?
これを?



口の中へとだんだんに広がっていく血の味に目眩を覚えながらも。
本能が、飲みたいと心で叫ぶ。


飲みたい?


これ。
人の、血を?


「飲んでいいんだよ」


今度ははっきりと。
後頭部へと回された翔琉の手のひらが、あたしから逃げ道を奪う。


ノンデ。





………ゴクン。



普通なら吐き気さえ覚えるような血液の、量。
口の中に広がったのは紛れもなくそれのはずなのに。


吐き気どころか。





口の中に広がったのは、甘い味。




甘くて、美味しそうな。





血液。








……………ゴクン





ゴクン   ゴクン    ゴクン





一口のんだ『それ』は。


驚くくらいに甘くて。
濃厚で。
味わったことのない味。




はじめての味を知ってしまった体は、もっともっと、と。
それを求めるままに貪った。
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