第10章 就職しよう
「こいつ、僕の連れなんで離してくれない?」
「え。」
グイッと引っ張られて班長という人の胸の中に収まる。ズボン下がったままなんですけど。ってか...連れって何!?
「班長の連れならしょうがない。」
「うん、ごめん。仕事に戻って。」
班長の指示で囲んでたおっさん達がすごすごと持ち場に戻っていく。た、助かった...
「あんたも早くズボン履いてよ。」
「あ、すみませ......え、」
顔を上げたら、帽子をクイッとあげ帽子で見えなかった顔があらわになる。それはよく見知った人だった。
「い、一松兄さん...?」
「そうですけど。足、踏まないでくれない?」
「ご、ごめん....なんで班長?」
「ヒヒッ、ゴミでクズな俺にはこの仕事場はあってるみたいで。」
「まじかぁ...ヤバいね。」
たった1時間ぽっきりで終身名誉班長になるなんて、本当ヤバいよ。でも、他の5人には振られたけど、一松だけでも正気を持っててくれてよかった。ズボンをあげて一松に抱きつく。
「え...な、何...」
「一松兄さん。」
あ、後ろに手が回ってきた。嬉しいな...一松ガールになりそう。
「てか、あんた今までどこに行ってたの。」
「イヤミさんに連れられてトイレ掃除させられてた。」
「アイツ油断も隙もねぇな...」
あ、そうだ。私ここから逃げたかったから兄さん達を呼びに来たんだった。
「兄さん、逃げよう!」
「え。」
「逃げよう!兄さん達おかしくなっちゃったけど、まだ間に合うだろうし!」
結果、チョロ松が正気に戻って夜抜け出すことに成功した。たった1日の労働だったけど、内容は凄く濃くてめっちゃ疲れた。家についたら、4男以外の六つ子に土下座された。
「ほんっとうごめん!!」
「怖かったよね!本当にごめん!」
「ブスって言ってごめん!!全然ブスじゃないから!むしろイケるから!」
「なつきごめんねーーっ!!」
「すまん!!正気を失ってなかったら俺が助けに入ってたのに!!」
という嬉しい謝罪を受けてニコニコしてしまったのはまた別の話...