• テキストサイズ

月下に閃く漆黒の刃

第9章 不本意の帰還


数日かけて再び師匠の元へと帰ってきた。
ものすごく気が重いが仕方ない。あの小屋が近付くにつれて重い溜め息が何度も出るが、もう腹を括ろう。
「ただいま戻りました…」
そろりと戸を開けると、丁度鎹鴉が来ていたようで手紙らしき書類を師匠が読んでいるところだった。
「…帰ったか。荷物置いたら裏山行ってこい」
「は、はい…」
「山頂まで行って降りてきたら話がある。日没までには戻れよ」
「は――え?日没ってそんなに時間なくないですか?」
「だからはよ行ってこい。お前を鍛え直す」
「はい…」
それから裏山の山頂まで上り、獣道をひた走って小屋まで戻った。
道中は以前よりも苦しくなかった。体は成長してるんだ。
(悔しい…)
なのに何故、何故失敗した?
(悔しい…!)
風柱から動きはできていたと言われたことが余計に悔しさを感じさせた。
「お、戻ったか」
「あの、師匠…」
「なんだ。そういやお前、さっきから妙に暗いじゃねぇか」
「わ、私…、風柱に見限られてしまって…」
折角学ぶ場を作ってくれたのに…と申し訳なく言うと、師匠は何を言っているんだとでも言いたげに続けた。
「何言ってやがる。お前は見限られたわけじゃねぇよ」
「え?でもこうして返されてしまったじゃないですか」
「…アイツ、詳しい説明もなしに返しやがったな」
そして師匠は私に向き直り、今回のことの詳細を教えてくれた。
第1に、私の意識が技に集中出来ておらず、動きはできていたがどこかぎこちなく技の精度が低かったこと。
そしてその集中出来ていない理由が師である闇裂宇練にあるのでは無いかと思ったから。
つまりは悩みを晴らしてから再度戻れとの事だったらしい。
「…なにそれ聞いてないんですけど。初耳なんですけど」
/ 38ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp