第8章 袋小路
それから数日が経過した。
私は未だに風の呼吸に苦戦しており、とうとう白旗を上げた。
不死川さんに壱ノ型を打ち込んでもらいたいと直談判することにした。
「あ"?壱ノ型を打ち込めだァ?」
…案の定、ジト目を向けられた。というか露骨に顔顰めてきた。
「えっと…、その、実際に体感してみたいなぁ〜と…」
「何言ってやがる。死んでも知らねぇぞぉ」
(死!?)
しかし、もう八方塞がりで何をしたらいいのか分からない。より鍛錬を積んでも、印象を強くしようとも、壱ノ型が出来る気がしなかった。
技の精度が上がる想像ができない。
「ダメ…ですか…?」
すると不死川さんは徐ろに立ち上がり、文を書く道具を出して筆を走らせ出した。
嫌な予感がする。
「あ、あの…不死川さん…?」
「1度帰れ」
「え…?」
「1度帰って基礎の基礎からやり直せぇ」
「な、何故です!?帰れってどういう事ですか!?」
「そのままの意味だ。鬼の頸を斬るほどの威力がある技を、それも柱である俺のを生身で受けるだァ?ふざけんのも大概にしろォ」
不死川さんの言葉は筋が通っていた。私は何も言い返せなくて、ただ押し黙るしか出来なかった。
風の呼吸が使えるようになれなかっただけでなく、きっと不死川さんの思いも裏切ってしまったんだ。
「分かったらさっさと荷物まとめやがれぇ」
「…はい」
それから元よりほとんど無かった荷物を手早くまとめ、私は風柱邸から師匠の元へと足取り重く歩き出した。
見上げた空は晴れやらない私の心を映したかのような曇天だった。