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月下に閃く漆黒の刃

第6章 帰還と謁見


(…まさか、な)
ふと過ぎった1人の人物。彼、闇裂宇練が影柱を引退する10年前に影柱を務めていた女性(ひと)。名を、影楼千夜(かげろうちや)。闇裂に影の呼吸を教えた人物である。
(千夜さんが亡くなってまだ30年ほどだ。いくらなんでも都合がよすぎる)
そして浮かんだ考えを否定するように軽く首を振ると、神影へ向き直った。
「まぁいい。次の呼吸を指南してくれる奴に手紙飛ばすから、とりあえず返事が返ってくるまでは休め」
「分かりました!」
「嗚呼、それから神影」
「はい?」
「まだ鬼殺隊士じゃねぇが一度御館様にご挨拶しに行くぞ」
「…………へ?」





「君が神影だね?私は産屋敷耀哉。事の詳細は宇練から手紙で聞いているよ」
「ぉ…お初にお目にかかります、お館様…!」
「そう固くならなくていいよ。顔をお上げ」
(無理です!!)
あれから、あれよあれよと連れてこられた鬼殺隊本部 産屋敷邸。そしてたった今謁見させて頂いているのが、鬼殺隊を束ねる最高管理者たる産屋敷耀哉様なのだそうだ。隊士達からは"お館様"と呼ばれているという。
「呼吸法の会得の為に柱に手解きをしてもらう許可だったね。私は構わないけれど、実際に請け負ってくれるかは彼らの判断に任せる。宇練、それでもいいかな?」
「充分でございますお館様。まだ隊士でもない者の為、学ぶ場を作るきっかけを頂き有り難く存じます」
「私としても若い芽を摘みたくはないからね。最終的な判断は彼らに一任するとはいえ、今よりも成長できる事を祈っているよ」
お館様のお声を聞いていると、なんだか不思議な気持ちになる。ふわふわする、というか。心地よい声、この言葉がしっくりくるような…そんな感じがする。
「次はどの呼吸を学ぶのかな?」
「風の呼吸を学ぶ予定です」
「そう。神影、君がこれから学ぶことはきっと鬼殺隊の大きな力になるだろう。頑張るんだよ」
「は、はい!」
そして私たちは産屋敷邸を後にし、師匠の小屋へと戻ってきた。
これからの修行が今まで以上に辛く苦しいものになるだろうと予感しながら、私は床へ就いたのだった。
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