第3章 潜みし才覚
「回りくどいのは好きじゃねぇから単刀直入に言う。お前さんには俺の元で修行して剣士を目指してもらう」
「………はい?」
理解が追いつかなかった。剣士を目指す?この私が?
冗談にしてはタチが悪い。
「まさか…冗談ですよね?まともに竹刀すら握ったことのない小娘ですよ?」
「冗談でこんなことは言わんさ。俺は本気だ」
「でも…」
「天斬神影。お前さんには剣士としてはもちろん、俺が使っていた「影の呼吸」を扱える可能性がある」
「影の…呼吸?」
それから「呼吸」というものについての説明を聞いた。
応用することによって体内に入った毒の進行を遅らせたり、体力などの回復を促進させたりできるのだとか。そして基本、呼吸というのは鬼を倒す時に必要不可欠な技らしい。
この人、闇裂宇練さんが教えてくれる影の呼吸は炎、水、風、雷、岩の5種類のうち炎の呼吸から派生した呼吸だと言う。
「それで…私にはその影の呼吸を習得できる可能性がある…と」
そういえばあの化け物…鬼と戦っているとき、見たことも聞いたことも無い技を使っていた気がする。夢中だったからよく覚えていないが。
「影の呼吸を習得するにはさっき挙げた5種類の呼吸を最低限使えるようになること、そして炎の呼吸は完全習得。そこから影の呼吸へと変化させる」
「具体的にはどうなれば習得したことになるんですか?」
「まぁ壱ノ型が使えるようになりゃ習得ってことでいいだろ」
(えぇぇ…なんか適当…)
「兎に角だ!神影はここで学ぶ気あるのか?どうする」
「私、は…」
家族は皆殺しにされ家も半壊状態。帰る場所など無くなった以上、どうせ死ぬならやれる所までやってみたい。
「――分かりました。貴方の弟子になります」
こうして、私は剣士を志したのだ。
私のような目に遭う人々を少しでも救えるように。