第3章 潜みし才覚
暖かい。心地よい温もりに包まれているかのようだ。
声が聞こえる
――では…をおねが…ます
――また…も知らんぞ……か
――彼女の……は本物…す。どうか…
――あずか…だけ……ろう。
誰の声だろう…。聞いたことがない声だ。
意識が浮上する感覚に委ね、そのままゆっくりと目を開けた。
最初に視界に入ってきたのは見慣れぬ…というより見覚えの無い天井。そして般若の面を付けた男。
「…………!?」
慌てて飛び起きるも身体中のあまりの痛みにすぐに蹲り、咳き込んだ。
「まだ傷塞がってねぇんだ。急に動くと死ぬぞ」
「…っあな、たは…」
「俺は闇裂宇練。かつて剣士をしていた者だ。お前さんは?」
「…神影。天斬神影です」
「天斬…か。煉獄の話じゃ、助けに来た隊員がやられてその隊員が持ってた刀で鬼を倒したんだってな」
「煉獄…?隊員…?それに…鬼って…」
今の話の流れからして、鬼というのは恐らく私が斬った異形の者だろう。何のかは分からないが隊員というのがあの背中に"滅"と書かれた黒い服を着た人。…煉獄という人は分からないが。
「…ふむ、何となくは察したようだな。煉獄というのは鬼狩りをしている部隊、鬼殺隊の柱…まぁ2番目に偉い地位の奴だな。炎柱、煉獄杏寿郎という男だ」
「れんごく…きょうじゅろう…さん」
誰だろう。初めて聞く名だ。あんな化け物を退治して回っているのならそれなりに有名になっていそうなものだが。
「…鬼殺隊は政府非公認の部隊だからな。鬼に関係した者は知ってるが、本来なら知らぬものさ」
「はぁ…」
「さて、本題に入らせてもらうがいいかね?」
「あ、はい」
声音が真剣なものになったので居住まいを正した。