第5章 月刊『壁男』と夜会
「それじゃ ――」
別れの言葉の前に身体は引き寄せられ耳にリヴァイの吐息がかかる。
「本助かった。ありがとうな」
最後の言葉を発した後にリヴァイの舌先が耳の外側をヒトなめした。驚き耳に手を当てるエリナの動きを表情を変えずに見つめている。
「おいおい、お前が印つけた“夜の舌技”に書いてあったことだろ?」
これもマナーの一つだろう?そう言いたそうな視線で平然と述べるリヴァイには何から説明すればいいのかわからない。
そして、そんなページもあった気がするが、印をつけた記憶などない。もしリヴァイがそこら中のご令嬢にこんなことをしていたら、大層な誤解を招くことだろう。
「と、とにかくありがとう!じゃぁ行くね」
逃げるようにその場を立ち去るエリナを唖然と見つめるリヴァイの背後にはエルヴィンが立っていた。
「俺が拾ってきた地下街出身の兵士はお目が高いようで」
「チッ、嫌味か?」
「褒めているんだよ。見る目がある」
赤い顔をして戻ってきたエリナにピクシスは ――そんなに必死に探さんでも ――と、エリナの仕事への姿勢に新年早々感心をしていた。
馬車が動き出すとエリナは言えなかった一言を呟いた。
――エルヴィン分隊長、今年もどうかご無事で・・――