第4章 地下のゴロツキ
「そう、エルヴィン分隊長が貴方のことを買っているみたいね。立体起動の練習は勉強になると言われたよ」
「・・チッ」
舌打ちで返されるとは思わなかった。地下の空間から抜け出せ、エルヴィン分隊長ほどの男性に評価されているのを嬉しく思ってはいないのだろうか?
「リヴァイと一緒に地下からきた他の2人はここにはいないの?」
見渡してもリヴァイと自分しかいない。他の2人もリヴァイのように無愛想で、鋭い目つきなのだろうか?会ってみたい気もするが、きっと気持ちいい態度はとってくれないだろう。
「・・いない」
瞳に哀しみが宿った気がしたが、ほんの一瞬だったことから気に留めない事にした。
「もう陽も落ちる、お前は帰らなくていいのか」
「そうね、ハンジさんの所に寄ってから帰るとするよ」
夕日が色濃くなってきた。急がねば兵舎に帰るのが遅くなってしまう。
「そうしろ。お前の下手な立体起動では夜間は特に危ない。さっきみたいに変な事して落下するぞ」
「見・・みていらっしゃったのね」
羞恥で顔が熱くなるのが分かった。
誰もいないと思ったから慣れない事もしたのに、しっかりと見られていた。
「・・移動する時にガスを噴射しすぎだ。実戦であっという間に無くなる、工夫しろ」
言い残し、リヴァイは飛び去って行った。
口の悪さと礼儀作法が兵士らしくないのは、地下の癖がまだ抜けないからだろう。
長年染みついたものは、数年経っても中々抜けないものだ。エルヴィン分隊長はきっと苦労されているのだろう。
そうまでして入団させた、リヴァイを除く残り2名に会ってみたい。そのうち会えるだろうと気楽に考え演習場を後にした。