第4章 地下のゴロツキ
草花の絨毯に身体を委ね、柔らかい日差しを全身に浴びていた。
駐屯兵団と調査兵団の中間地点にある丘はエリナのもう一つのお気に入りの場所。鼻腔をくすぐる花の香は平和な世を感じさせた。壁の中では・・という条件付きで。遠目に調査兵団本部が見える。人類のために命を賭して巨人に立ち向かう英雄たちの根城。好き好んで外に出なくてもいいのではないか、壁内で平和を享受すればいいのに・・。何度もそう思うがきっと彼らには彼らの事情があるのだろう・・。
あれから調査兵団の演習場には行かず、駐屯兵団の整備されていない演習場で訓練をしていた。マスロヴァ技巧長は時々ハンジさんの元に通っては砲台について話し合っているらしい。本日も巨体を白馬に乗せて調査兵団本部へと出かけて行った。
キッツ隊長の許可が下りなかった以上、堂々と時間を取っての話し合いはできない。秘密裏にマスロヴァ技巧長とハンジさんが業務の合間を縫って話し合ってくれているのだ。勿論、表向きは技巧部のみで開発していることになっているから成功したとしてもハンジさんに報酬があるわけでもない。それがとても歯がゆく申し訳ない。今日こそはお詫びをと思っていたがどのような顔をして会えばいいのか・・。
マスロヴァ技巧長いわく、ハンジさんは
―――えー!?エリナが申し訳なく思っちゃってんの?関係なくないかい?真面目だなぁ!―――
そう言って笑い飛ばしていたらしいけれど・・。
調査兵団に向かいたくない理由はハンジさん以外にもある・・。
その理由を思い出す前に、エリナの瞼は重くなっていった。