第3章 特訓とハンジ
「上手くいかないなぁ」
少しずつ上手くいかないのだ。周りに良い人がいるとは思うが、納得がいく仕事はできない。精鋭部隊に入る腕前もなく、役に立とうと思えば事務処理でお役に立つしか思いつかなかった。だからこそ、ピクシスの副官であるアンカの仕事ぶりを間近で見て副官の仕事ができたときは嬉しかったものだ。キッツの配下になり、認めてもらいたい一心で頑張ってきたが・・。こうも否定されると弱音も吐きたくなる。周りに恵まれていて、それでも上手くキッツと働けない自分は情けない。
黙り込んだエリナの様子に気付いたのだろう。マスロヴァはエリナの表情を見ないように背を向けた。
「別にキッツ隊長の許可を得なくても、会う事くらいは許されるだろう?僕が調査兵団に出向くよ」
「・・すみません。私がもっと上手く隊長と交渉できたらよかったんですけど。ダメですね私は」
大きな手がエリナの頭に触れた。
「エリナ、君はそのままでいい」
エリナを認めてくれるマスロヴァの言葉は作業音と共に優しく響いた。