【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第86章 リゾートアル島 1日目
2人の体がピシリと固まったのは言うまでもない。センゴクという名前、後ろから近づいてくる声。見聞色を使うまでもなく感じる威圧感。
『エ、エース…』
「お、おう」
私たちは今服をしっかりと着ていてマークが隠れているとはいえ、この帽子は目立つだろう。2人でお揃いで、エースの手配書にも乗ってる帽子だ。
『この帽子…やばくない?』
「あァ、俺も思った。」
「お、そこのお二人さん!ちょっと聞きたいことがあるんじゃが…」
あたりを見回してもどこにも2人で動いている人はなかった。
「『ッ!!』」
「なーにをキョロキョロしとるんじゃ。お前さんたちじゃ…よ…」
ポンと肩を叩かれて、後ろを振り向くと驚いているのは固まっていたおじいちゃん。
『なんでここにいるのかな〜』
「エース…アン…お前ら…ッ」
下を向き、プルプルと震え出したおじいちゃんはいつものように怒るのかと思った。しかし、それは違ってて、ポタリと地面に垂れている水。
「ジジイ?」
『おじいちゃん?』
「…ず、ずまんがっだ…」
下を向いたまま、顔をあげないおじいちゃんは掠れた声で謝ってきた。ここでは目立つため、近くのカフェに入った。かなりシュールな雰囲気だが…。カフェで席に着く頃にはおじいちゃんは泣き止んでいた。
「あの戦争の時…わしァ、後悔したんじゃ。立場を退けてでも何故助けようとしなかったのか…あの時…お前たちが死んでいたらと考えたら…」
おじいちゃんのこんな発言は聞いたことなんてなかった。拳を固く握っていたおじいちゃん。
『やめてよ。おじいちゃん』
「アン…」
『おじいちゃんは自分の信念に基づいてやったんだもん。あれがおじいちゃんの正義で覚悟だったんだよね』
「…」
『私たちは海賊を選んだ。おじいちゃんは海軍。敵になることなんてわかってた。それでもこの道を進んだんだから。』
「そうだぜ、ジジイ。あん時俺に…家族に同情してくれただけで十分だ。実際俺も生きてる。アンも。だからいいんだ!」
「お前ら…」
『私たちは今のところで幸せだよ!』
にっこりと笑って見せると、またおじいちゃんは涙を流した。
『ありがとう、おじいちゃん!』
「あァ…」
信念を貫いて私たちに向かってくれて…後悔しながら私たちが生きていたことを喜んでくれて…私たちを愛してくれて。
「『ありがとう』」