【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第85章 リゾートアル島 前夜
Side.Marco
あれからすぐに戻ってくるだろうと思っていたが、ナースやアンは日が暮れてもまだ戻ってきてなかった。少し残っていた書類に手をつけていると、目の疲れを感じた。
「疲れたよい…」
ほんの少しだけ…そう思って目を閉じたらかなり時間が経っていたようだ。コンコンと控えめに聞こえるノック音、そして入ってくるアンにほんの少しだけ意識が覚醒した。
『入るよー』
「…帰ったのかよい」
『うん、ごめん、寝てた?』
「いや、ちょっと気を失ってただけだよい」
『それを寝てたって言うんだよ。部屋できたみたいだから、これからは部屋に戻るね』
ほんの少しの冗談にもしっかり返してくれる。ついに部屋ができてしまったことでアンと離れることになった。
「あァ、そんなこと言ってたねい。」
『マルコに借りてたシャツとかは新しいの買って返すね』
「いや、いいよい。」
お前の匂いのついたままでもいいよい。なんて言ったら引かれるんだろうねい。
『じゃ、今までありがとう。また、明日』
あまりにも呆気なく去ろうとするアンを咄嗟に引き留めていた。そして、本能が姿を見せた。
「行くなよい」
『え?』
自分でもあまり意識してないその言葉はアンを固めるには充分だったようだ。
「最後くらい、ここで寝ていけよい」
『…』
「ダメかよい?」
『…仕方ないな…じゃ、お風呂入ったらまた戻ってくるからね』
「よい。」
『先に寝ててもいいからね』
アンはこの顔での頼み事に弱いってことを知っててやる俺はずるいやつだよい。ふと触れてきたアンの手に擦り寄るように頬を寄せた。“ん…”と小さく声を漏らしたアンは手を離していった。
「早く戻ってこいよい」
『ん。』
アンが部屋を出たのを確認すると、頭に手を置いて息を吐いた。結局俺はこの2週間、告白もろくにしないでアンとの甘い関係をそのままズルズルと続けていた。
断らないから…俺にも希望はあるんじゃないか…なんて思って今の関係をまだ続けていたいと思ってしまう自分もいた。
「だが…理性がねい…」
あの可愛さがあるのだ。乱せばさらに増すんだろうなんて考えてまたため息を吐いた。
「抱きたい気持ちはあるけどない…」
やはり、今の関係が心地いいんだよい。