【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第81章 戻った誇りと不穏
クザンさんは嫌がりもせずに話を聞いてくれた。こう言うところが海軍内で人望が高かった理由なんだろうな。
『クザンさんを好きになってたら、こんなに苦しむことはなかったかもしれませんね』
「なに?俺、振られてるわけ?」
『そうですね、今は少なくとも…彼以外は考えられませんから。たとえ苦しい恋だとしても、初恋だったから。』
「恋する乙女になっちゃったわけね〜。んじゃ、後は伝えるだけってことだ」
『…そぅですね』
「頑張りなさいよ、アンちゃん。俺ァ、いつでも空いてるからね。」
『それは、振られたらってことでいいんですよね』
「そうだな。よいしょっと」
座っていたクザンさんは重い腰を持ち上げて、立ち上がった。
『もう行くんですね。』
「まぁね…とりあえずあの言葉今は伝えないで置いてやる。俺から言ったんじゃ決まりもしねェからな」
『ふふ、ありがとうございます』
「それじゃ、ま、達者でな」
最後にわさわさと頭を撫でられて、クザンさん消えていった。
『海の祝福を…』
見えなくなる影に言葉を呟いた。外はもう暗く、雨も止んでいるようだった。
『…静か。』
モビーの姿を見えるところまで行くと、甲板に人の姿をちらほらと確認した。マルコはあの女の人といるのかな。そんなことを思うとズキリと痛む心に胸が苦しくなった。
「おいおい、こんなところで姉ちゃん1人でなにしてんだァ?」
「ヒック、暇なら俺たちと…ヒック遊んでくれやァ」
「ん?なんだァ?怪我人かァ?」
どうしてこうも人が感傷に浸っているときにいつもこう集まってくるのだろうか。
『私、今感傷に浸ってて忙しいんです』
「ヒッヒッヒ、振られちまったのかァ?」
「俺たちが癒してやるよッ!!」
男たちは酒瓶を片手にこちらへ歩いてくる。
『帰ってください。じゃないと怪我しますよ。』
「あ?なに言ってんだァ?俺たちはちっとは名の知れた海賊でなァ」
「女1人に負ける…ヒック、わけねぇ」
『そうですか…』
「おら、行くぞッ!!」
グッと腕を引かれると、無理矢理立たされることになり刺青を入れた足がズキリと痛んだ。
『触んないでッ、ってあれ?なんで!?』
「ヒッヒッヒ…お嬢ちゃん、能力者か?そりゃ好都合だぜ。俺のつけている指輪が見えるか?これは、海楼石で出来てる特注品でな。」
『そんなの、振り解けばッ!!』
「やめときなァ」