【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第81章 戻った誇りと不穏
Side.Thatch
「アンちゃん、それ」
『お待たせ、サッチ』
出てきたアンちゃんは、腹部に親父のマークを彫ったであろう包帯、それと足首にも包帯、そして…右耳にあけられたピアス。
「俺そんなに聞いてないんだけど?」
目まで真っ赤にして、包帯グルグルで…親父以外のやつなんか聞いてないし…ピアスって…。
『…ちょっとね。ま、気にしないでよ』
「ったくよ…ありがとな、おやっさん!世話になった」
ガチャンと袋いっぱいのお金を置いて、アンちゃんを連れて外に出ると、シトシトと雨が降っていた。
『雨…』
「そうみたいだな。帰るか。」
『そうだね…目の見えない今、こんなところで動いてもね』
「そうだな…」
アンちゃんの能力で雨に濡れないように進んでいく。
「ちょっとだけ濡れたらどうなるのか興味あったんだけどな」
『なら、濡れてみたら?』
「いや、やめとく。アンちゃん、今すごい痛いんじゃない?」
『え?』
「今、足も腹も耳も、あと心も…さっきから全然笑えてないぜ?』
歩く度に身体が強張ってるのも見たらわかる。足を庇うようにして歩いてるのも、よく耳を触ってんのも…あん時から笑顔を無理やり作って、無理してんのも。
「泣かないの?」
俺がそう聞くと、ピクリと肩が動いた。
『…ッ何を…』
「わざと痛くされたり、無理やり傷を増やしたり…泣きたいのに泣かないのはなんで?」
少し道から外れたところに大きな木があった。そこに入ると雨は避けられているようでアンちゃんは能力を解いた。
『…空みたいに簡単に泣けたら、気分が変わったのかもしれないね』
「…」
『泣いても何も変わらない。マルコが私を避けた。きっとこれからは話すのにも元通りにも時間が…ッ!!』
「アンちゃん?」
アンちゃんがみていたのは、少し先に見えるモビー。いや、その下にいるマルコと見知らぬ女が抱き合ってるところ。
馬鹿野郎がッ!
『…サッチ…私、今日は船には帰らない。』
「は?ちょ、待って!!どこいくの!?」
『明日には帰る。今日は帰れない。』
パシャンと体を水にして消えたアンちゃんは、親切にも俺にシャボンの雨除けを張ってくれていた。
「くそッ!!なんでこうなんだよ!?」
行き場のない怒りに側の木を殴った。