【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第70章 たった2年、されども2年
Side.Ace
マルコ2人で夜に忍び込みに向かった部屋で偶然にアンを見つけた。真っ暗な街を見下ろして何か口ずさんでいた。こちらの姿を確認して驚いたのか窓を閉めようとしたのでマルコから飛び降りて窓を閉めるのを止めた。
こちらを見つめているその顔は“誰かわからない”と言った困惑の表情。“本当に忘れてんだな”なんとなくそう思った。憎まれ口を叩かれながらも笑いあったあの日々が懐かしく感じた。
「よ…本当に生きてたんだな。」
『…え?』
「エース…記憶がないってのも本当みたいだねい」
いつも通り話しかけてみたが、困惑の表情は変わらなかった。
「元気にしてたかよい?」
マルコが話しかけてもおんなじだった。
『ポートガス・D・エース…ですか?』
お前もポートガスだ…と叫びたくなった。でも、疑うようなその視線に焦りは禁物だと本能が言っていた。
「あァ…本当にわかんねェのか?」
『…全く覚えてません。最近、サボという人に教えてもらいました。後ろの鳥さんも…仲間ですか?』
仲間…か。いや、正しくは…
「あァ、家族だ。」
『家族?』
「俺もマルコも…お前、アンもな?」
そうだ。俺たちの家族なんだよ。死んでまで守ろうとしてたじゃねェか。俺が今見せているのはきっと、酷い顔なんだろうな。
「マルコのことも覚えてねェか?」
『…マ、ルコ…』
名前を呼んだときにアンの顔が苦痛に歪んだ。
「だ、大丈夫か!?」
『…ッ、私は…思い出したい…助けて欲しい、エースッ』
「あァ…何をしたらいいのかも分からねェ。でもなんとかしてやりてェ。」
本心だ。本当にお前を救いたい…
「具体的にはどうすんだよい」
「んー、記憶の共有とかできたらいいのにな!」
『…ッう…あの、みんなの名前…教えてくれませんか?』
「みんな?あァ…家族のかよい?」
「いいぜ!まずは俺がエースだろ!そんでこっちがマルコ!あとはフランスパンみたいな頭のサッチ、毒舌王子ハルタ、めっちゃ美人のイゾウに、「待てよい、エース…親父がいねェよい」…あ、そうだな。俺たちの船長は…エドワード・ニューゲート。」
一人ひとりの名前を挙げていくと、アンはなお苦しみ出した。それに気づいた奴が動き出したのか“逃げて”と言われた。俺たちは“必ず迎えに来る”といい、すぐに飛び去った。