【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第70章 たった2年、されども2年
その夜、ドフラミンゴは帰ってこなかった。
『〜♪〜♪』
誰もいない静かな部屋で寝るのはちょっと勿体ないな…なんて思ってしまって、夜なのに窓を大きく開けて街を見ていた。この国には独自の法律がある。“オモチャは人の家に入ってはならない。逆も然り”、“夜12時を過ぎてから行動してはならない”、“オモチャはオモチャの家へ、人は自分の家へ帰ること”。これが何を意味しているのかはわからないが…12時を過ぎた今、街の明かりは全て消えており、真っ暗で夜の海に溶け込んでいるようだった。
『真っ暗…』
少しだけ歌を口ずさみながら、外を眺めていると目の前にあの青い鳥がやってきた。
『綺麗…』
しかし、その青い鳥は消えることなくこちらへと飛んできた。
『嘘…やッ!!』
窓を閉めようとすれば、バンッと窓を押さえつけられて動かなくなった。そこにはオレンジ色のテンガロンハット、半裸の男が立っていた。
「よ…本当に生きてたんだな。」
『…え?』
「エース…記憶がないってのも本当みたいだねい」
近づいてきた青い鳥は、だんだんと人の形になっていく。その優雅さに警戒を忘れて“悪魔の実だ”なんて思ってしまった。
「元気にしてたかよい?」
“よい…”、“エース”、最近よく聞いた言葉だ。
『ポートガス・D・エース…ですか?』
「あァ…本当にわかんねェのか?」
『…全く覚えてません。最近、サボという人に教えてもらいました。後ろの鳥さんも…仲間ですか?』
「あァ、家族だ。」
『家族?』
「俺もマルコも…お前、アンもな?」
エースと呼ばれる青年は苦しそうに笑う。
「マルコのことも覚えてねェか?」
『…マ、ルコ…』
ピシリと痛む頭に目が眩む。
「だ、大丈夫か!?」
『…ッ、私は…思い出したい…助けて欲しい、エースッ』
「あァ…何をしたらいいのかも分からねェ。でもなんとかしてやりてェ。」
「具体的にはどうすんだよい」
「んー、記憶の共有とかできたらいいのにな!」
『…ッう…あの、みんなの名前…教えてくれませんか?』
「みんな?あァ…家族のかよい?」
「いいぜ!まずは俺がエースだろ!そんでこっちがマルコ!あとはフランスパンみたいな頭のサッチ、毒舌王子ハルタ、めっちゃ美人のイゾウに、「待てよい、エース…親父がいねェよい」…あ、そうだな。俺たちの船長は…エドワード・ニューゲート。」