【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第66章 失ったモノ
ピチョン、ピチョンと頬が濡れる感覚があった。
「あ、しまった…まぁ、また吹けばいいかな。」
頭上から聞こえてくる声に意識をはっきりと起こしていく。身体が動かない…ここ、どこ。
『ん…』
「あら、起きたのね。体起こせる?」
そこで優しく声をかけてくれていたのは、緑の髪の毛の人。
『だ…れ?』
掠れた声に自分でも驚いたが、親切な女の人は水をそっと飲ませてくれた。
「あなた、若様が連れてきてくれたのよ。生きててよかったわね。」
『若様…?』
「えェ、ドンキホーテ・ドフラミンゴ…名前くらい聞いたことがあるでしょう?」
頭を傾けると、女の人は眉間にシワを寄せた。
「あなた、名前を言ってごらんなさい?」
『名前……』
「今まで何をしてたかわかる?」
『…いえ』
「…ちょっと待ってて、若様を呼んでくるから。」
その女の人はパタパタと走っていって、すぐにサングラスをつけた男の人を連れてきた。
「おいおい、アンちゃん。俺を忘れてるなんて言わねェよな?」
その男は私に問いかけた。が、本当に分からない…。
『すみません…分からないんです。アンちゃんっていうのは私の名前ですか?あと…目が片方おかしいんですか?」
そう聞き返すと、男の人は頭に手を置いていた。
「モネ、医者を呼べ。」
「はい、すぐに」
先ほどの女の人はモネと言うようで、近くにある電伝虫を使って電話をしていた。
「俺はドンキホーテ・ドフラミンゴ…ドフィと呼べ。」
『ドフィ…』
「お前は、ポート…いや、アンだ。自分の名前くらい覚えておけ。それと目だが何かしらで使い物にならなくなったから、義眼に変えさせてもらった。」
『そう…なんですね。』
「…」
頭を優しく撫でてくれた大きな手…どこかで感じたような気がする。
「すぐにこちらに来るとのことです。」
「そうか…何かわかったらまた知らせに来い」
「はい…すぐに」
ドフィは部屋から出ていった。
「挨拶が遅れてごめんなさい。私はモネ…普段はさっきの若様の秘書みたいなことをしているの。あなたのお世話係の子がいるんだけど、その子はいま任務中で…だから、私が今は世話しているのよ」
『ありがとうございます。モネさん』
「モネでいいわよ、あなたも家族なんだから」
家族…その言葉に胸が熱くなった。