【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第65章 境界線
『ッう…ふ…ッ』
「なんだァ?悔いはなかったんじゃないのか?」
こんなにたくさん…たくさんの思いが…ッ
『うぅ…ッ』
「言ってみて?どうして泣いてるの?」
『…こんなにッ、思ってくれ…た人がいて…ッヒック…愛してくれる人がいて…ッ悔しい…』
「なにが悔しい?」
『もっと…一緒にッいたかった…生きていたかったッ!!』
こんなところで言ったってなにも変わらない…なにも変えられないのにそれでも悔しい…!
「やっぱり生きてたいんじゃねェか。何見栄張ってんだ。馬鹿娘」
「アン…それでいいのよ?もっと海賊なら強欲に生きなければ…この人みたいに」
『ッおと、さん…お母さんッ…』
肩を抱いてくれるお父さん、抱きしめてくれるお母さん。どんなに泣いても、どんなに叫んでも、時間は戻らない。
『うわァァ…ッァ、あ…』
「辛いわね…苦しいわね。大切な人を置いていく気持ちなんて私たち以外味わっちゃダメなのよ。」
「無理して笑って何になる…それで死んでたしかにお前が残したかったものは残るだろう…だが、お前を残したかった奴らの気持ちはどうなる。無茶するんじゃねェ…そう言われてただろ?」
子供みたいに泣きじゃくる私を慰め、叱ってくれる。
「あなたは本当に世界に愛されてる。よかったわね」
「今まで助けてきた奴らを大事にしろよ」
なにを言ってるのかわからなかった。死んだ今、大切になんてどうしようも無い。
『何を…ッ』
「あ、そうだ。あと…これ食ってけ!!」
むぐっと口の中に詰め込まれた何かを咀嚼した。
『う”ッ!!ゴクン』
「お、なんだ。悪魔の実ってのはほんとにまずいのか?」
『ゲホッゲホッ…何…』
「何の実か?そりゃ、お前がよく知ってんだろ?ほら…時間だ。」
薄く透けてくる身体に恐怖を感じた。
「俺と」「私の」
「「生きるはずだった寿命をやる/あげるから」」
「次は長生きしろ?もう2度と来んなよ!!」
「次は旦那さん連れて挨拶に来てね。孫の顔も見たいわ」
「それはいらん!!旦那も孫もいらんからな!!」
「あら、私は見たいわ。」
『…何で…』
「愛されてるって言ったでしょう?もっと楽しんできて」
「死に急ぐんじゃねェぞ!!元気にやれ!」
2人は笑顔で手を振ってくれた。だんだん見えなくなる2人にお辞儀をした。
『ッありがとう…お父さん、お母さんッ!』