【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第64章 欠けたカケラ
Side.Sabo
ドォンと机が叩いた勢いで壊れた。
「なに、サボくん!?どうしたの!?」
「アンが死んだだと…冗談で言ってんのか…エース」
[そんなわけねェだろ…]
「冗談じゃなかったら、なんだって言うんだ!?この間まで、ニコニコ笑顔で笑ってたんだぞ!?」
電伝虫のエースはいつもより元気がなく、声も覇気がない。
[サボ…]
悲痛に訴えるそんな声が聞きたいんじゃない。
「ほんと…なのか…」
[あァ…あいつみんなに謝ってたって…先に逝ってごめんだって…ふざけんじゃねェよな。あいつ…俺に死ぬな死ぬなって言っときながら…自分が先に行くんだからよ。]
「ッエース…」
エースの無理に話す声に、話は本当なんだろうと信じた。でも、そんな簡単に受け入れることはできなくて、俺は唇をかみしめた。
[あいつ言ってたよ…愛してくれてありがとう…って…俺たちの愛情も届いてたかな…]
「あァ…当たり前だ。エース…」
[っんと馬鹿な奴…だよな。3日後に海に花を流して葬儀するんだ。墓は作らねェって決めた。お前も気分が乗れば流してやってくれ]
「あァ、」
それだけを言うと、電話は切れた。今まで黙っていたコアラがようやく言葉を発した。
「アンちゃん…亡くなったの…?」
「あァ…」
「そ、そんな…あんなに強かったのに…どうして…ッ」
「俺が聞きたいよ…」
コアラはワンワンと泣き始めてしまい、俺も頬を暖かいものが伝った。
ーサボ!!
もうあの声が聞けなくなるなんて思わなかった。あの笑顔が見れなくなるなんて…思わなかった。
「どこのどいつだ…アンを殺したのは…」
俺の怒りはその見えない相手へ向かった。
ー復讐からはなにも生まれないでしょう?
そうは言ってたけどよ…俺はそうは思わねェ。
少なくともお前を殺した奴は…全世界を相手にすることになるだろうよ。
「アン…お前はこんなに愛されてたんだからな」
グシャリと潰れた書類を見ても、なんとも思えない。
何一人で逝ってんだよ。俺の気持ちにまだ返事してねェだろ。エースエースって兄貴のことばっかりだし、家族のことばっかりだったし。
「もっとッ…自分大事にしとけよ…」
ポツリと呟いた言葉はコアラの泣き声にかき消されたのだった。