【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第64章 欠けたカケラ
Side.Ace
ハッと目が覚めたとき、周りにアンの姿はなく…みんなは船から何かを見ているようだった。
「エース隊長…大丈夫ですか?」
「あ、あァ…ここはモビーか。アンは?」
そう聞くと、周りでは誰もが口を噤んだ。ポッカリと穴の開いたような感覚…。まさか…。
「おい、アンは生きてんだよなッ!?」
「ッアン副隊長は…隊長たちを救うために1人島で…」
隊員が言い終わる前に、俺はサッチのところに走って行きその胸ぐらを掴んだ。
「グッ!!」
「「「サッチ隊長ッ!!!」」」
「どうして…なんで、あいつの手を掴まなかったッ!!」
怒りと共にくる、半身が消えた損失感…それを考えると涙が溢れた。
「アンをなんでッ…ッうぁ…くそッ!!」
「すまねェ…」
そう簡単に呟いたサッチにどこにもぶつけられない怒りがこみ上げて俺はサッチを殴りつけた。何度も、何度も…!
「なんでッ!!アンをッ!!」
なんで、俺なんかのためにッ!!
「エース…やめろよい…」
マルコの声になぐるのをやめた…途端に湧き上がる痛み…
体が痛いんじゃない…心が…おれが…ッ
「う、うッ、うぁぁあッッ!!!」
倒れ込むようにしてサッチの胸を掴みながら泣き喚いた。
ほんとに死んだのか…ッ。
あんときみたいに実は生きてましたって出てこいよッ。
なんで、なんで…お前…
ボロボロと溢れてくる涙を叫び声をサッチはおれをただ受け止めてくれた。
「馬鹿野郎が…ッ」
Side.Marco
おれが目覚めたときには、その周りにアンの姿は確認できなかった。ドォンと大きな音にその方を見るとエースがサッチに乗り掛かり泣きながら、行き場のない怒りをぶつけていた。
「エース…やめろよい…」
そう言って声をかけると、拳は止んだがそれは再び涙と叫びとして船に響き渡った。
「アン…」
エースの声を境にみんながそれぞれの思いがあり、涙を流していた。
「馬鹿野郎が…」
そう呟いたのはエースと親父だった。親父も普段絶対に見せない涙を流し、アンの死を悲しんでいた。
馬鹿だよい…こんなにも愛されてんのに…
おれの言葉も聞かねェで…どこに行ってんだよい…
「ッう…アン…」
そんなところじゃ手が届かないじゃねェか