【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第64章 欠けたカケラ
Side.Thatch
俺の手をつかまないでアンちゃんが最後に言った言葉は、あの時の約束だった。“俺は約束なんかしてねェよ!!”そう心で叫んでも時間は巻き戻らなかった。
アンちゃんの作ったシャボンに包まれて、島からどんどん離れていく。途中でジョズやアトモスたちも合流したが、俺たちと同じように傷はなくなっていた。
「ッくそ…」
その数分後、なぜか近くに来ていたモビーにシャボンごと持ち上げられて、パチンと弾けた。そこにはデュースや他の家族が既に医療器具の準備をしていた。
「ッアンーーー!!!」
「戻ってこいッ!!」
「早くッ!!!」
イゾウやハルタがどんどん崩れていく島に向かって叫んでいた。その目からは普段流さない涙を流しながら。するとゆっくりゆっくりとモビーは島から離れていく。
「誰が…誰が動かしてんだッ!!!」
「そ、それが…1人で…!!」
まさか…そう思って海を見ると波が小さくちょっとずつモビーを島から離していた。
「ッくそッ…なんで…そんなに」
生き急ぐんだよ…ボソリと呟いた言葉は宙に消えていった。
「崩れる…島が…」
遠くに見える島はいつのまにかもうあと8分の1くらいしか残っておらず、そこが崩れれば島全体が無くなる。いつまで経ってもどれだけ待っても帰ってくることがないアンちゃんにみんなは崩れていく島をずっとみていた。
島の影も見えなくなったとき、船はピタリと止まった。どれだけ遠くの海に逃されたんだろうか。
「サッチ隊長…」
「なんだ」
「親父とマルコ隊長…エース隊長が目を覚ましました…」
「そうか…」
立ち上がろうとした時、ドォンと背中に感じた痛み。
「グッ!!」
「「「サッチ隊長ッ!!!」」」
「どうして…なんで、あいつの手を掴まなかったッ!!」
そこにはボロボロと泣いているエースが馬乗りになり俺の服を掴んでいた。
「アンをなんでッ…ッうぁ…くそッ!!」
「すまねェ…」
そう呟いた時、頬に痛みが次々と降りてくる。
「なんでッ!!アンをッ!!」
「エース…やめろよい…」
ピタリと止む拳に反して降ってくる涙は止まらなかった。
「う、うッ、うぁぁあッッ!!!」
倒れ込むようにして俺の胸を掴みながら泣くエースに言葉をかけてやることは出来なかった。