【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第62章 見つけた敵
そんな時だった、コンコンとノック音が部屋に響き、シュライヤが“タイミングいいな”と言葉を発して、扉に向かった。
「ありがとよ。」
再び戻ってきたシュライヤの手にあったのは、私が着ていた服だった。
「クリーニングかけてやったからな。血も取ってもらった。」
『ありがとう。』
服を受け取ると、その場でシャツを脱ぎ捨てた。
「お前な…もっと恥じらいを持てよ。」
『あ、いたの?ごめんね。』
着ていた服に袖を通すとまだ温もりが残っていた。
『あったかい…』
「俺もいいもん見させてもらった。」
後ろから抱きついてくるこの男は“本当に懲りないな”。
『触らないで。』
「くくく、目の前で服脱いでくれたのに抱きつくのはダメなのか?」
『私、家族以外の人にあんまり触られる好きじゃないの』
「家族…って言っても血のつながりがあんのは兄貴だけだろ?」
『…そうよ、それが何か?』
「ふっ…ホントいい女だな。サバサバして媚びてこない。海賊には勿体ない。」
『賞金稼ぎも変わらないわよ。服、お風呂、情報ありがとう。もう会うことはないでしょうけど、お元気で』
「あァ…俺に狙われることがないようにせいぜい家族とやらを守るんだな」
『当たり前よ』
扉を開けて、廊下に出ると窓の外はまだ雨が降っていた。
『最初からこうすればいいのよね。』
水の膜を貼る…私に雨が当たらないように。みんなは船に戻ってるのかな…マルコやエースたちはいるかな。
『ついに…あいつの場所が見つかったよ。』
傘をさしながら歩く男女が怯えた目で私を見る、店の店主も目を逸らす。
「殺気がでてるぞ…アンちゃん」
降っていたはずの雨が止んだ。上を見上げると傘が差してあって後ろにはいつもの髪型ではなく、前髪を下ろして髪を後ろで束ねているだけのサッチ。
『なんでここに?』
「ん、まァ、散歩?というか港町が騒がしくてな。何かと思って様子見に来ただけだよ」
『ふーん…何かあったの?』
「んー、なんか裏町で男の死体が大量に見つかってんだって。」
『へぇ〜』
“あ、それ私だ”とは流石に言えず、サッチの傘に大人しく入って船までの道を歩く。
「で、なんで殺気出してたわけ?」
『…後で話すよ。大事なことだから親父様にも…ね』
「そうか。アンちゃん」
『なに?』
「人殺しはもっとバレないようにね。」
『え?』