【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第57章 大喧嘩
後ろ姿でわかるその人は…上へ這い上がろうともせずにどんどん沈んでくる。
『なんでッ!!』
海の中を泳いで、体を掴むとすぐにシャボンを張った。
『マルコッ!!マルコッ!!』
Side.Marco
サッチに殴られた跡も手当てしねェで何してんだよい。そう思ったのはかなり時間が経ってからだった。
船の様子も相変わらず静かなところを見るとアンもまだ戻ってきてねェんだろう。
“気付いてなかったのか”とサッチは言った、“何がだ”と問えば“今のお前さんには聞く権利はないぜ”とイゾウが言った。
気付いてないわけじゃない…。と言いたい…。俺がこんなにも執着し、嫉妬し、馬鹿みたいにお節介して…。
「わかってんだよい。」
言えるわけねェだろ。年が2倍近く違うんだ…。
初恋…だったんだと思う。海で初めて会った時に気になった。手配書で見たその姿は凛々しくて綺麗だった。“こんな女もいるんだねい”なんて柄にもなく見入ってしまってのを覚えてる。それから、何回も見て…ってこれ以上は女々しいだけだねい。
もう考えることもねェか…俺は馬鹿みたいな嫉妬で大切に思う奴を傷つけた。それだけだよい。
書類を手にし始めたときだった、ドカドカと入ってきたサッチに再び怒鳴られて引きずられ外に連れて行かれる。
「2人でしっかり話してこいッ!!」
そう言葉が聞こえたと同時に俺の身体は宙に浮き、甲板の塀を乗り越えた。
「ばッ!!」
馬鹿野郎ッと叫ぶ時間もなくドボンッと海に沈んだ。
冷たい…力が入らねェよい…
あの馬鹿…絶対許さねェ…
ゴボッと大きく息が漏れた。息もできなくて、苦しい。微かに開いた目にはモビーとキラキラ光る海があった。
『マルコッ!!マルコッ!!』
必死に呼ばれる声がした。意識を浮上させると気管に溜まっていた水を吐き出した。
「ゲホッ…ゲホゲホッ!」
『マルコッ、よかった。』
なんて顔してんだい…。
「すまねェ…あんな事を言うつもりはなかったんだよい」
『うん、私もごめん…』
ポロポロと泣きながら言うその姿もなかなかくるものがある。
「海はこんなに綺麗だったんだねい」
『そうだね…』
「アンよい…俺は…」
ふと“嫌われたら…”、“今まで見たいに過ごせなくなったら”なんて女々しいことが浮かんできた。
『マルコ?』
「……」