【ONE PIECE】サキエルがほほ笑むのは...
第57章 大喧嘩
『情婦だと思って?』
「あれは…言葉が…」
薄暗くなる空にポツポツ雨が降り出した。
『…彼氏でもないくせに…私を縛ろうとしないで!!』
「ッてめェ…」
『自分たちはやることやってる癖に、私は子供扱いして…私だって海賊よ。』
降っていた雨はいつの間にか嵐に変わっていた。
「ま、マルコ隊長!!中に!!」
「帆を畳めーーーッ!!」
「親父も中へ!!」
「グララララッ、まァ、待て。」
『私は自由に生きるためにここにきたの…縛られるためじゃない。ましてや、情婦と同じだなんて…』
「グララ…そこまでにしとけェ。アン…お前が荒れるっつうことは、世界の海が暴れるって事だ。そんなに気持ちを昂らせてんじゃねェ。」
『ッ…』
「マルコたちがお前を大切に思ってるのも知ってんだろォ?言葉は悪いがお前にはまっすぐ育って欲しいからだ。分かってるはずだ。」
『わかってる…分かってる…そんなの知ってる…!!でも…家族に、友達に警戒警戒ってそんなのできないッ!!それに…』
雨の水とは違う、暖かい水…伝うのは頬。
情婦なんて言わないでほしい…そんな言葉と…
『一緒にしないで欲しかった…』
そんな言葉を向けないで欲しかった…。
「グララララッ…マルコ。俺ァ言ったはずだァ。妹を大切に思うのはいいが、それで泣かすのは俺ァが許さねェと。」
「あァ…分かってるよい。」
『頭冷やす…海も落ち着かせる。モビーを降りろというなら降りる。しばらくは海に帰る。』
船の塀に行くと、隊員が止めるのも聞かず荒れ狂った海へ飛び込んだ。
「「「アン副隊長ッ!!!」」」
「アンッ!!」
海の外側荒々しい…けど中は全然荒れていなくて落ち着いたものだった。ポロポロと流れる涙は止まらない。
『ッとま、って、海…』
〔どうして泣くの。〕
〔誰が泣かすの、僕たちの女神を〕
〔食ってやる〕
〔壊してやる〕
『違う…違うの…ちゃんとはっきりさせなかった、私が…悪いの…ッふ…ふぅ』
海には誰もいないはずなのに…声を殺して泣くなんて…。
〔泣かないで…〕
『ッでも…ふ、ぅう…』
あんな言葉を紡がないで欲しかった…1番に言われたくなかった…。
〔どうして?どうして、泣いてるの?〕
〔酷いことを言われた?〕
〔それとも…悲しいから?〕
〔その人が好きだったの?〕