第19章 帽子の男
『チッ!させるかっ!!』
姿勢を低くしながら憲兵に向かって走り、銃を持っている腕を切りつけた。
銃は重い音を立てて床に落ち、憲兵は呻き声を上げて腕を押さえている。
『何が正当防衛だ。そっちが先に手を出してきたんだろ』
冷たい目で見下ろし靴のつま先で這いつくばっている憲兵をつつく。
『このゴロツキめが…。だが、この騒音で、仲間が気づくはずだ。お前達はもう豚小屋行きだな…』
リヴァイは舌打ちをすると扉の方を見る。向こう側から数名の憲兵の走ってくる音が聞こえた。
リサは銃口を向けられた恐怖で小さく震えている。
今のリサを連れて、廊下の憲兵を蹴散らしながら抜けるのは厳しい。
立体機動装置で窓から抜けるとしても、2人分だとガスの消費が1人よりも多く今のガスの量だと不十分。
――――目の前の憲兵殺して、俺が囮になるか
立体機動装置が使えるリサなら自分が囮になっている間に装着して窓から逃げれる。
ただリサの目の前で人殺しをするのは避けたかった。
――――だが、殺るしかねぇ
ナイフを逆手に這いつくばっている憲兵に近づく。
『や、や…止めてくれ…』
『止めてというリサにテメェらは乱暴しようとしたんだよな?』
『ち、ちが…』
『リヴァイさん…!?何するつもりですか…?』
『追ってが来ない間にこいつらを殺す。リサ…俺の立体機動装置を使って窓から逃げろ。俺が囮になる』
『い、嫌です!!リヴァイさんも一緒に!!』
リサは強く首を振るとベッドから下りるとよろけながら窓の前まで歩く。
裸足で床を歩いたせいでガラス片で足の裏を切るがそんなことは気にしてなかった。
『私のせいでリヴァイさんが危険な目に合うなんて耐えられません。貴方は捕まるわけにはいかないんです!ファーランさんやイザベルの為にも…』
『リサ!足切れてるじゃねぇか!』
大丈夫ですとリサはガウンを捲り窓の縁に立つ。
『おいっ!リサ!何考えてやがる』
『私はリヴァイさんを信じてます』
手を後ろで組んでリサは笑うと、そのまま後ろに倒れた。