第17章 責任と真面目故(●)
大きめの鏡の目の前で透明のお粉をはたき、スモークレッドのアイシャドウ、マッドタイプの口紅を滑らせる。
甘いムスクの香水を首元や手首に軽く吹きかけた。
『おい、時間だ。行くぞ』
『はい…』
扉の向こうから少し急かす声が聞こえる。
店から新調された襟元に豪華なビジューが乗ったピンクのアシンメトリーのドレスをふわりとさせ、花の総柄のパンプスを履く。
『アンタが早くに返済を希望してくれたから、あちらさんもご満悦だぜ。あれから…まだ4日だもんなぁ』
送迎の男はリサの胸元をチラチラと見ながら言う。
『はい…4日しか経ってませんね。……リヴァイさん…皆…ごめんなさい』
『あ?最後何か言ったか?』
いえ…とリサは首を振る。
リヴァイと会ってから今日は4日目。
次は5日後だとリサはリヴァイに言っていた。
―――自分の責任にリヴァイさん達を巻き込むわけにはいかない。
1人で何とかしようと今日も華やかなドレスを身に纏う。
『え、リサ…何…そのドレス…どこ行くの?』
―――――イザベル?!
送迎の馬車に乗ろうとすると、パシュッと音ともに現れたのはイザベルだった。
片腕にはパンがいっぱい入った袋がぶら下がっている。
きっと、お裾分けか一緒に食べようと持ってきたものだろう。
『あぁん?ガキが何か用か?』
送迎の男は目を細めイザベルを睨む。
『俺はリサに用があるんだ。おっさんは帰れ』
『生意気なガキだ…。まぁ…色気はないがこういうのが趣味なやつもいるからなぁ…』
何かを思いついた送迎の男はイザベルの上から下を見る。
ニヤリと笑うとイザベルの腕を掴もうとしたが、リサは送迎の男を咄嗟に引っぱった。
『わ、私が精一杯働くのでいいじゃないですか!この子は関係ないです!さぁ…行きましょ』
『まぁ、それもそうだな…。おらっ、
さっさと乗れ!嬢ちゃん、助かったなー!ひひっ』
馬の手網を持ち、そこでもニヤニヤと笑う。
リサはちらっとイザベルを方を見て、ごめんね…と口パクで伝えるとドレスの裾を持ち上げて馬車に乗り込む。
リサが乗り込むとすぐに馬車はガタガタと揺らしながら走って行った。
『リサ……。ちくしょ!!兄貴に知らせないと!』