第16章 始まりの過去
『兄貴ー!おかえり!』
あれから暫くリサと話をしたあと、後ろ髪引かれる思いでリヴァイはアジトへ戻った。
『あぁ。イザベル、仕事任せっきりですまなかったな』
『アノ件もう少しで決まりそうだ!』
頼むな…とリヴァイにわしゃわしゃと頭を撫でられるとイザベルは嬉しそうにする。
ふと長めのソファに目をやるとファーランが仰向けで寝転がっていた。
『ファーラン、イザベル、ローザから聞いたか?』
2人は静かに頷く。
リヴァイはローザが2人に喋ったことに語弊がないように、リサから直接聞いた話を2人にした。
『くそっ…地下街にいるせいでリサみたいな美人がそんな目に遭うんだ。。地上ならまともな金額で薬も買えたはずだぜ!』
『確かにな…。しかし、リサの話を聞くと…引っかかるところがあるぞ』
『あぁ、俺もだ。…リサのばあさんが渡した反物…、いくらで売れたのかリサは知らされてねぇみたいだ。手切れ金代わりに渡すぐらいだ…それなりの額に違いねぇ。娼館が懐にしまっている…か』
『そのリサに惚れ込んで通っている貴族も怪しいな…』
――――どんな男か分からねぇ
――――どんな風にリサに触った
―――あいつが腹括って始まった事とはいえ
――――胸くそわりぃ…
『……ヴァイ!聞いてる?リヴァイ零れてるぞ!』
リヴァイはハッとしてファーランたちの方を見る。
ボーッとしていて、手元のグラスに注いでいた酒が溢れ、零れていた。
リヴァイは舌打ちをすると布巾を手にする。
『兄貴、どーする?』
『……リサにも伝えたが、5日後に後をつける』
『だな!もしリサが騙されていい様に使われてるだけなら…容赦はしない』
『あぁ…』
リヴァイはグラスに入った酒を睨むように見つめた。