第16章 始まりの過去
『わ、私に何が聞きたいのでしょうか…』
ずりずりと後ろに下がり背中に壁が当たる。
ひんやりとした壁が更にリサの身体を冷やした。
『……ったく、そんな怯えるんじゃねぇ。ほら、こっちに来い』
用意された紅茶を一気に飲み干すと、椅子から立ち上がりリサの手を引いてベッドに座らせ、リヴァイは横に座る。
リサは少し手が震えていて、リヴァイは手を包み込んだ。
『大丈夫だ…。さっきも言ったはずだぞ…何があっても傍にいるから安心しろ…』
リサの頭に手を回し抱きしめる。
きっとリヴァイさんはあの事を知っているのかもしれない…。
私から言うのを待っているのかもしれない…。
深く呼吸をする。
『私の…話を…聞いてください』
リサはリヴァイに抱きしめ返し、そのままぽつりぽつりと話だした。
――――私がおばあちゃんと一緒に住んでた事はお話したことあると思います。
――――血は繋がってない他人だったけど、本当の家族のようでした。
――――地下街で育った私は無知で何も出来ない女の子でしたが、おばあちゃんが家事、掃除…特におばあちゃんが得意だという裁縫を教えてもらいました。
――――真っ白な紙に絵を描くように刺繍をしていくのはとても楽しく、おばあちゃんを真似して色々作りました。
――――そんな元気だったおばあちゃんも地下街の環境のせいか体調が次第に悪くなってきていました。
――――地下街の法外な金額の薬なんて簡単に買えません。私は……おばあちゃんを助けたくて…
『…私の、初めてを…身体を…売りました…』
『…………』
リヴァイは何も言わず力強くリサを抱きしめた。