第52章 初めましてと再会
賑やかな街並みを歩いていた一行はアーヴェンを先頭に歩く。初めて見る光景にキョロキョロしながら歩くものだからリサは躓きそうになり、リヴァイに腕を掴まれる。リサが苦笑いをしてリヴァイはため息をつく。そんな2人をアーヴェンは変わらない表情で見ていた。
地下ではほとんど見ない生花がゆらゆらと人工的に植えられている。赤や黄色や白など鮮やかで風の動きにつられていて、空気を軽く吸えば花の香りが通り抜けた。
暫く歩けば周りは緑の壁に阻まれ、目線よりは高い。背の高いアーヴェンよりも少し高く、リヴァイとリサが緑の壁の向こう側を見ることは出来ない。
『もう間もなくミッシェル家でございます』
緑の壁の先にはリサの父親がいる。
自分の親なはずだが初めて会うというのは他人に近い。不思議な感覚に緊張する。
先を歩くアーヴェンはとある場所で立ち止まり、誰かと話していた。
漸くこちらを見たと思えば、穏やかな笑顔で手を前に翳しこちらですと促す。
緊張する胸を押さえ深呼吸する。隣にいるリヴァイはリサから動き出すのを静かに待つ。
俺もいるから。無言だったが、リサはそう聞こえた。
『……わぁ!立派なお屋敷!!』
『そうだな……』
街並みの庭に咲いていた花が丁寧に管理された空間で色めき立つ。空の雲と同化するような屋敷。
別の世界のような光景にリサはポカンと口が空いていた。
『リサ様、リヴァイ様。どうぞご案内します』
再び2人はアーヴェンを先頭に庭園を進んだ。
*
屋敷の中は絵に描いたような内装だった。
肖像画は勿論創設者のリサの祖母の姿がある。リサが覚えている顔つきよりも強く、姿勢も真っ直ぐに座っている。以前アーヴェンから聞いた話をリサは思い出し、苦労と創設者としての考えを思えば目の前にある肖像画の祖母がしたことは分からなくもなかった。
それでも、女性として母としても後悔したのも事実。
肖像画とは顔つきが違う柔らかい笑みをする祖母しかリサは知らない。
リサが知っている祖母が本来の祖母の姿のような気がした。