第41章 父と母
『さて・・・何を買うか・・・。リサは疲れてるだろうから調理が必要ないものがいいな』
『リヴァイ様』
家を出て腕を組みながら歩いていると、自分の名前を呼ばれ振り返る。
そこには両手を後ろに組んで立っているアーヴェンがいた。
『おいおい、爺さん。さっきのやり取りはなかったことになったのか?リサを見てくれと頼んだはずだが?』
『そんな怖い顔をなさらずとも承知しておりますよ。すぐ家も目の前にあります。リヴァイ様はたいそうリサ様を大切にされておりますな』
チッとリヴァイは口を歪ます。
買い物やファーラン達への連絡をさっさと済ませたいリヴァイは、億劫そうにアーヴェンになんの用か聞く。
本気で硬いパンは止めてくれって言いに来たのかと。
『リヴァイ様。リサ様を引き取らせて頂きたいのです』
『そうかよ』
わざわざ、リサがいない時にアーヴェンは言う。
リヴァイは心臓が踏み潰された気持ちになった。
アーヴェンがここに来た時点でそんな気がしていた。リヴァイがリサに地上に帰れと言わすために。きっとこの後の話でアーヴェンはその事をリサに伝える。それの後押しする役目をして欲しいのだろう。
『帰るかどうかはリサが決めることだ。いきなり自分がクララ・ミッシェル家の令嬢、跡継ぎなんて聞いたら気が動転する。爺さんはリサの意志を聞かずに無理矢理連れて行く気はないだろ?』
『そのような事はしません。ディック様も私もリサ様のお気持ちを1番に優先致します』
『だったら、それでいい。俺は急ぐからリサの元へ戻ってくれ』
アーヴェンは手を前にやり頭を下げると姿勢がいいままリサの家へ戻っていく。
『はぁ・・・』
リヴァイは頭の中で紅茶のカップが割れる様を何度も思い出し、繰り返していた。