第41章 父と母
アーヴェンはリヴァイが淹れた紅茶をゆっくり口に付けると、リサとリヴァイを見てにっこりと笑った。
『リサ様のお祖母様クララ様、そしてクララ様のご子息でありリサ様のお父上の名前はディック様です』
『わ、私にお父さんが!!あの・・・お父さんは生きているのですか?』
『えぇ、勿論でございます。お元気に暮らしております』
リヴァイは良かったな・・・とリサの頭を撫でるとリサの目尻には涙が溜まる。
クララ・・・祖母が他界し、家族と呼べるような人はもういないと思っていた。
リヴァイやファーラン、イザベルへの絆は大切な人に変わりはないが、身内はもういないと思っていただけに胸が熱くなる。
大切にしたい人が増える。
リサにとって喜ばしいことだ。
この瞬間までは・・・。
『リサの親父さんや、婆さんが裕福なのは分かった。恐らく住まいもシーナだろう。だが、何故リサと母親は地下にいる?そして婆さんも・・・』
アーヴェンは自身の髭を触り、話を続ける。
『ディック様の奥様・・・リサ様のお母様は地上の娼館で働く娼婦でした。ディック様は奥様・・・リリー様に一目惚れをされました。たいそう大事しており、リリー様は容姿だけではなく心も美しく、私はディック様が幸せになる確信をしておりました』
リサは初めて父と母の馴れ初めを聞き、恥ずかしいような嬉しいような自然と笑みが漏れる。
幼かったリサの記憶は朧気ではあるが、子どもながらに母は綺麗だと思っていたことを思い出す。
微笑みながらアーヴェンの話を聞くリサを横目にリヴァイは自分の母を懐かしむ。
子どもにとって母親は自分の世界そのもの。
リヴァイも幼くして母を失ったが、柔らかく温かいぬくもりは大人になっても思い出せた。
母親以外のぬくもりがあったことも・・・。