第40章 割れたティーカップ
『私の姓はおばあちゃんから譲り受け、気軽に名乗らないようにと言われています。理由は分かりませんが・・・すみません』
『そうですか・・・。クララ様はリサ様を守るために・・・。それではリサ様が名乗れないなら私が確認しましょう』
え?とリサはアーヴェンを見る。
『リサ・ミッシェル様・・・そして、貴方様のお婆様はクララ・ミッシェル様。・・・当たってますでしょうか?』
『・・・あ、あってます・・・何で・・・アーヴェンさんが私の姓を知ってるんですか・・・?それに、さっきからリサ様って・・・』
『リサ、落ち着け。さっきから気になっていたことがある。爺さん、リサの婆さんの名前はクララって言ったか?』
アーヴェンは、はいと頷く。
『そうか・・・。リサ、よく聞け。俺は地上のことはそこまで詳しくねぇが・・・ひとつだけ確信した』
『え、何ですか・・・?』
『クララ・ミッシェル・・・、それは貴族が好むブランドの名前だ。衣類、小物、装飾品・・・それらを扱うトップクラスのブランド・・・。地下街でも一時期紛い物がよく出回っていた』
『リヴァイ様、よくご存知で。クララ様の裁縫の腕前は壁内一であり、1代にしてトップブランドまで築き上げました。リサ様はクララ様の実のお孫様なのです。そして、私はクララ様の元にいました執事です』
リヴァイとアーヴェンの視線はリサに注がれる。
『ち、違う・・・違います!私は地下街で育ち、小さかったからあまり覚えてないけど・・・おばあちゃんも1人で私も1人で・・・だから、いつの間にか一緒に暮らすようになっただけで・・・おばあちゃんはともかく、私は本当の孫なんかじゃないです!』
椅子をバタンと倒しながら立ち上がり、何度も首を横に振る。
『・・・爺さんは、リサと婆さんのこと知ってるんだろ?リサは知る権利がある』
『勿論でございます。本日はその為に参りました。お話をさせてください』