第1章 陽の当たらない場所
朝がくる。いつもの朝。
リサは目を覚ますと朝日とは程遠い薄暗い部屋で目を擦りながら起きる。
『おはよう。。おばあちゃん。。』
棚の上に乗せられた丁寧に畳まれたハンカチを触る。何かの植物の刺繍がされた真っ白なハンカチ。
おばあちゃんといっても、血の繋がりはない。
こんな地下街。
一人だと寂しい。
一人者同士、自然と一緒に暮らすようになった。
おばあちゃんは綺麗好きで、こんな誇りっぽい地下でもよく掃除していた。
そんなおばあちゃんを傍で見て、リサもそれなりに綺麗好きになった。
何もない部屋だけど、おばあちゃんが生きていた時のように綺麗な部屋を保っている。
『年頃の女の子なんだから、身だしなみとしてハンカチぐらい持っているんだよ』
そう言ってこのハンカチをくれた。
地下街に住んでいる者が持っているとは思えないような、触り心地のいい生地のハンカチ。
この植物は何だろう。
いつか分かるのかな。
おばあちゃんの形見として今日も大事にポケットにしまう。
『ちょっとぶらっとしようかな』
日課となっている散歩に出掛けた。